物語分析8号室

物語を分析して、糧にするブログ

コンセント

 

何故兄はあんな死に方をしたのか。朝倉は兄の死をきっかけに兄の姿や死臭を感じ取れるようになり、かつての恩師の元に。いつしか朝倉は自分の本当の姿と向き合うことに、そしてそれは新たな可能性に繋がるのだった。


 私はこのような物語を勝手に旅のような物語、と呼んでいる。気づいたら、ずいぶん遠くまできたなぁ、と思うからだ。兄の死から始まる物語は気づいたら全然遠いところにいた。こういう物語は好き嫌いが分かれると思うし、それがオカルトならなおさら。当時この本はずいぶんと売れて話題になったらしい。当時はオカルト関連が流行、というか今よりもずっと受け入れられていた時代だったんだろうな、と。
 話としてはぐっと引き込まれる物語で、それは私がこういうのに抵抗がないからだと思う。精神病からオカルトへ。よくあるといえばそうなのかもしれないけれど、この物語は読者を引き込む力がある。それはおそらくは水が流れるように徐々に移り変わるからだ、精神病からオカルトへの変化は自然で、違和感なく読めるのがすごい。一つ難を言えば、登場人物が都合良く増える、ということくらいだろう。新しい人物が出てきて、物語が進むのは少し都合が良すぎるように感じた。一応大学時代の関係者だから、突然過ぎるってことはないのだけれど。

 

ざっと物語

 


兄が不自然な形で自然死をしたのをきっかけに、朝倉はその死の原因となったものを知りたいと思うことに。そして死んだ兄の姿や、人から死臭を感じるようになった朝倉はかつての恩師であり、恋人だったカウンセラーに会いにいくことに。またかつての同級生に会うことにより、スピリチュアルの世界のことを知り、やがて朝倉もその世界に入っていく。兄も朝倉もシャーマンとしての才覚があり、それゆえに人の感情やらいろいろなことを受信してしまうことがわかる。兄はそれに耐えきれなくて死んでいったのだった。
 朝倉は自らをコンセントして、苦しんでいる人をあちらの世界をつなげ救う道を選ぶ。


この話の登場人物は負の部分によって成り立っていることがわかる。こういうキャラ作りもあるんだなと勉強になった。