物語分析8号室

物語を分析して、糧にするブログ

木曜日に生まれた子供

 

弟のティンはある日土を掘ることに夢中になり、いつしか土の中で生活するようになった。その日から家族の幸せが少しずつ崩れていく。しかしそれはなるべくしてなったのだ。私は次第にこの家族の現実と向き合っていくことになる


 ガーディアン賞という児童文学賞を受賞した作品。これが児童文学?と思うほど割と難しい。いやストーリーは単純ではあるんだけれど、これがなぜ児童文学?と思ってしまう。冒険活劇でもないし、教育的な部分が明確に描かれているわけでもない。
 じゃあつまらないのか、言われたらNOだった。予測の付かない話は引き込まれるし、主人公であるハーパが少しずつ成長し、現実と向き合うようになる物語はわかりやすい。そして一見現実世界のようで土の中で暮らす弟ティンの存在で、ファンタジーなのか現実なのかあいまいな世界観が描かれている。エンタメではなく文学にエンタメ振りかけたような作品に仕上がっていると思う。なんというか、小説の醍醐味、のようなものがこの小説を読んで改めて思い知らされた感じだった。

 

 

ざっと物語


ティンはある日土(泥?)の中に埋まってしまう。それをきっかけにティンは土を掘り、その中で生活することに。家の下で掘っていたティンは地盤をゆるめ家を倒壊させてしまう。父は気落ちしたが、次第に元気を取り戻し新たな家を作ることに。
一番下の子であるカフィが井戸を作るために掘っていた穴に落ちてしまう。それをティンは救うが、カフィは死んでいた。姉のオードリーは大地主のケルヴィンの元で仕事、兄のデヴォンは自分の馬を売ってお金を家においてどこかへ仕事へ。
 オードリーがケルヴィンに暴行され父親が仕返しにいくが、すでにティンが仕返し(殺して)をしていた。また最後にティンは金塊を家に置き、またどこかへ行ってしまう。
 ハーパーはみんなで違うところに住もうと提案し、海の近くに家を建てるも、父親は金塊を掘るために元の場所からは動かず、母親もそれに付き添った。ハーパーとオードリーは二人で海の近くの家で暮らす。ティンとは会っていない。

 

 メモ
ティンという存在
 ティンはある意味救世主というかウルトラマン的な存在でもある。ハーパーはティンという存在を一番受け入れていて、その結果からかピンチの時にはティンが助けてくれている。この物語はティンという謎の存在のために、いつティンが出てくるのか、ティンはどこで助けに来るのか、どうやってティンが物語りを動かすのだろうか、といった期待感を常にもたらせてくれる存在だと思った。彼の存在で物語の色がかなり強くっている

ハーパー
 語り手である主人公のハーパーは7~9歳の少女。子供の目線での家族や貧乏。恋愛、などまっさらな目で描かれている。そしてそれを大人を少し歪んだキャラとして描き、子供と大人の存在を際立たせている。ハーパーはフィルターのない真実の目を持っているように思われる。