物語分析8号室

物語を分析して、糧にするブログ

暗幕のゲルニカ

 

ピカソの愛人であるドラと現代でピカソ展を開こうとしている瑤子の二つの視点からピカソの傑作「ゲルニカ」と戦争を巡る物語。ピカソが込めた願いとは、無事ピカソ展を開くことができるのか。


面白かった。芸術作品を巡る小説では「ダヴィンチコード」が有名だろうけど、それとはまた違った感じでした。サスペンスというよりかは人間の物語?だったような、いやこれも戦争ものにはいるのだろうか?まぁとにかくよかったです。でも私は知識が全然なかったのでこの物語はどこまでが事実なんだろうか?と気になってしまう。いやそれもこの本の醍醐味なのかもしれないが、余計なことを考えてしまうので、やはり事前に知識あった方がいいなと思う。微妙に事実をずらしていたり、全然違っていたりと、うまいというかずるいというか。ほかの作品でもこういうのはあるけれど、なぜかこの作品はすごくひっかかりました。単純にピカソに興味ができたからかもしれませんが。

 


 ピカソが万博のための作品を依頼され引き受けるがどんな作品を作ろうか決められない。そんなときにゲルニカ空爆が起こる。それをきっかけにピカソは制作に取りかかり、かの傑作「ゲルニカ」が生まれる。
 瑤子の夫が3.11に巻き込まれて亡くなる。そして戦争が始まるが、その会見のときに本来掛かっていたゲルニカタペストリーに暗幕がかかっており、問題となる。


 ドラが貴族であるパルドに出会う。パルドもまた芸術を愛する青年で、ドラとともにピカソの力になる。ピカソは無事万博に出品したが評判は賛否両論で思っていた以上に話題にならなかった。反戦のメッセージが強く、戦争中ということあり、ゲルニカが処分されることを恐れたドラたちはうまく戦火に巻き込まれないようにゲルニカの亡命を模索する。
 ピカソと戦争を題した展示会を行い反戦へのメッセージを行いたい瑤子たちは現物のゲルニカを展示するためスペインに掛け合うが了承は得ず。しかし急遽パルドと会うことに。


 ゲルニカを様々な国で行っている展示会に参加させ、最後にアメリカに保管させてもらうことに。「スペインが真の民主主義になるまで預かってて欲しい」とのこと。しかし戦争広がっていき世界大戦までなってしまい、ピカソのアトリエがあるパリまでもヒトラーに占領されてしまう
 パルドと会うことになった瑤子だったが、了承は得ることはできなかった。しかし再度会うことができ、必要性を訴え、とある作戦を提案し展示できることに。しかし瑤子はゲルニカを狙うテロリストに捕まってしまう。


 パリは無事解放される。しかしピカソは奥さんと子供ところに行ってしまい、ドラは自らピカソと別れることに、最後にアトリエを撮影する。また妊娠していたが、その子をピカソの絵と写真を一緒に養子に出す。
 テロリストに捕まってしまったが瑤子だが、その一人がピカソの未発表の絵とその写真を持っていて、その人と瑤子はゲルニカをこのままテロリストに渡してはならないと意見を一致させる。FBIが助けにきたこともあり瑤子は無事助かる。その後展示会を無事開催させるが、そこにはゲルニカはない。本物のゲルニカは国連に移したのだった。


反戦の象徴ともいえるゲルニカを巡っての話。メインはどちらかというと瑤子の現代の話だが、ピカソ時代の登場人物が絡んでくるなどいろいろ勉強になった。(単純に私がそういういう展開が好きなだけかもしれないが)ただまぁテロリストのところはちょっと唐突感というか現実離れが強く微妙かなと、もちろんそれまでに伏線は用意されてあったからいいのだと思うけれど、そこだけすごく違和感があったのはもったいないなと。あの場面がいるのか?とも思うけれど、ゲルニカを展示会じゃなくて国連に持って行ったのはあそこで「これはわたしたちのゲルニカだ」という瑤子の結論があったからこそだと思うので、まぁ必要かな。あとクライマックスとして「瑤子がテロに拉致られる」というのは盛り上がるしね、と。