物語分析8号室

物語を分析して、糧にするブログ

AX

 

恐妻家の殺し屋の物語。怖いのは人を殺すことよりも妻だった。早く稼業を抜け出した彼だったが、中々抜け出せずも家族のために今日も仕事をこなす。人気の殺し屋シリーズ第三弾。もちろん、おなじみのキャラも出てきます。

 

ド安定な伊坂さんの小説。もちろん今回もド安定でした。ただ安定過ぎて、驚きや新しさは少ない。面白いんだけど、ファンにとってはまんねり気味?あと今作は連作短編ではあるけれど、いまいち伏線が少なく(もちろんあるにはあるんだけれど)少し残念ではあった。でも、これはハードルを自分であげているだけかも。よくよく考えるとそんなに伏線回収がすばらしいっていう作品は近年ないかな(何様?)グラスホッパー、マリアビートルに比べると少し弱い。

 

AX
 家に入るときいかに音を立てないかに気をつける。これは殺し屋だからではなく妻に気づかれないように。なぜなら恐妻家だから。ターゲットのテロリストよりも妻を恐れるなど、しっかりとキャラや世界観を見せている。わかりやすく新任教師も黒だったが、この話のテロリスト集団がこれから先一度も出ないのは残念。

Bee
スズメバチ、という殺し屋に狙われる主人公だが、それと同時に家の庭に雀蜂の巣ができる。巣を駆除しながらも襲ってきたスズメバチを対処。

Crayon
 友達ができた話。同じように恐妻家の知り合いができて意気投合。仕事では身代わりの死体を作るか、それともその依頼主を殺すかの二択に。友達が酔っ払いに絡まれうっかり殺してしまう。主人公はそれを身代わりとする。その友達はどこかに引っ越してしまう。

EXIT
 デパートの警備員と友達になる。友達の息子が仕事をしている姿を見たい、と言ってくるがどうも怪しいので主人公にこっそり見てもらい仲間が盗みそうだったら注意することに。
予見は的中し注意された子供たちは逃げ出すが、逃げた先のトイレには死体が。友達は実は殺し屋で狙われているらしく、間違えてその男を殺してしまったらしい。実は主人公と友達はともにターゲット同士であったが見逃すことに。友達は主人公のほかの殺し屋にも襲われるが主人公が隠していた武器を使い排除する。そして主人公はこれ以上仕事はしないと仲介者にいうが、その結果死んでしまうことを示唆して話は終わる。

FINE
 主人公とその息子が交互に主役に。主人公パートは主人公が死ぬまでを、息子パートはは仲介者が死ぬまでを描く。鯨や桃も出てくる。主人公は鯨を雇い、仲介者を狙うも作戦がばれていた。前回の友達に再び狙われるも彼も家族が懸かっていることを知り自殺することに。息子は仲介者である病院の診察券に死ぬ当日に診察予定が記載してあったのを見つけ、疑問に思い調査に、主人公が仕掛けた罠に仲介者が倒れる。クリーニング屋として息子を見守っていた友達もかけつけ、無事処理を行い、丸く収まることに。


最後の一つ前で主人公が死ぬことを示唆されたのは以外で面白かった。こうくるかとむねを弾ませた。最後はまぁまぁであったが、いかにピンチの中逆転するのか、といった殺し屋シリーズをしっかりと受け継いでいた。主役が息子に変わることにより妻が主人公のことをどう思っていたのかなどが知れるのもよかった。書き下ろしである最後2編が繋がっていたけれどほか三編はそうでもなかったのが残念。まぁ繋がり過ぎてもご都合主義過ぎて冷めてたかもしれないし。